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演目|翁、萩大名、来殿
番組
江戸時代、加賀藩を収めた前田家は能楽を大変愛好しました。第5代藩主・前田綱紀が宝生流を導入して以来、「加賀宝生」といわれ、金沢では今日にいたるまで宝生流の能が盛んです。
前田家の城である金沢城、その藩庭を起源とする兼六園といった伝統的なエリアと、しいのき迎賓館や金沢21世紀美術館など近現代の建築が集まるエリアとのはざまに設えたのが、今回の舞台です。
「人新世(アントロポセン)」という、人間による地球環境への影響の大きさゆえ「自然」が改めて問い直されている今日。自然と都市、伝統と現代のはざまであるこの地にあらわれた「翁」を通して、改めて私たちの日常を見つめ直します。
迎賓館の南側にある推定樹齢300年の2本のスダジイ、「堂形のシイノキ」(国の天然記念物)にちなんで名づけられたしいのき迎賓館。この建物は、大正13年に建てられた旧石川県庁舎をもとにしており、正面の格調ある意匠はそのままに、北面を現代的なガラスの空間へとリニューアルしたものです。この建物自体も、二つの異なる時代を併せ持つ「はざま」としての場といえるでしょう。
PHOTO: Yamato Ikehara(YUKI TSUJI
+ Plants Sculpture Studio Inc.)
熊本公演に続き、今回の公演でも華道家であり舞台美術家でもある辻雄貴氏による1日限りの特別な空間がつくられました。人と自然、植物、季節との関係性を重視する辻氏は、自然の生命力を人間の創造力で復元させるきっかけとなる能舞台を考えます。
異なる価値観が出会う「はざま」という場所性は、異なるものを橋渡す植物でもある竹の造形による舞台空間で表現されました。特に能舞台の四隅にある柱は、かほく市内の放置竹林からとられています。また、通常、能舞台に描かれる老松や竹の代わりに、舞台の背景には、季節に合わせ、前日夜に収穫された真っ赤な紅葉が設えられました。
華道家。1983年 静岡県出身。工学院大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。辻雄貴空間研究所 代表取締役。徳川慶喜公屋敷跡浮月楼芸術顧問。建築という土台を持ちながら追求する「いけばな」は、既存の枠組みを超えて建築デザイン、舞台美術、彫刻、プロダクトデザインなど、独自の空間芸術として演出される。
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